伏拝(ふしょがみ)の地名の由来
本宮町の三里地区にある伏拝と呼ばれる地域は、熊野本宮が初めて目に見える場所である。
発心門王子から約30分、水呑王子を経て伏拝王子に到着する。
山並みの間に、かつて熊野本宮大社があった大斎原(おおゆのはら)がこんもりとした小さな森として目に入ってくる。人々はようやく姿を現わした本宮に感激して、伏し拝んだという。 これが地名の由来と言われている。正しくは「ふしおがみ」であるが、地元住民は「ふしょがみ」と発音することが多い。また「ほっしんもん」は「ほっしんぼ」と発音している。 伏拝王子には、こんな言い伝えが残っている。 和泉式部が熊野に参ろうとして、やっと熊野本宮大社が見える伏拝までやってきた。しかし月の障りとなった為、参詣できないと悲しみ、歌を詠んだ。 「晴れやらぬ、身のうき雲たなびきて、月のさわりとなるど かなしき」 すると熊野権現が夢に現れて、 「もろともに、塵にまじわる神なれば 月のさわりとて なにか くるしき」 とお告げがあり、和泉式部は無事に本宮へ参ることができたのだ。 |
中央から少し右の山あいが大斎原 |
和泉式部の供養等が建てられているが、実際に和泉式部が 熊野に参ったということははっきりとしていない。
というものこの王子は中世の記録にはでていないからだ。つまり時代が合わない。
これは時宗の僧たちが、熊野の神は「浄不浄を嫌わず」という特別な存在であったことを物語として
伝えたところからきているものであろうと言われている。
人々の歩みが熊野の土を削り、その歴史が作られた
熊野の山を人々が歩く。 蟻の熊野詣が熊野古道を形づくっていったのであろう。 熊野古道と言えば那智山の大門坂など石畳がをよく紹介されている。本宮の中にも石の階段などがあるが、これは一部であって山の地道も多く、写真のような状態が多い。 その道は周りの山林部分とかなりの段差があるのが分かる。 これが、1200年の歴史がつくった熊野古道であると栗栖さんが話してくれた。はじめからこんな段差があった訳でなく、たくさんの人々が土を踏みしめてこの段差ができたのであろうと。 栗栖さんが一番怖いのは、山火事だという。 「ここで山火事を起こすことは世界遺産を無くすこと。 景観を損ねるとしても、山火事注意の看板は残しておきたい。」 古道を歩く人々にも理解を求めていきたい問題だ。 古道周辺は行政が買い取っているが、山そのものは個人の所有。栗栖さんのように山を手入れしていれば良い状態が保たれるが、現実としてはそうではない場合もある。所有している人が本宮の人とは限らない。また、後継者不足などこれからは保全についてが課題となるだろう。 |
地元住民が誇りに思う熊野
伏拝王子跡のすぐ横に「伏拝茶屋」という無料休憩所がある。 発心門から本宮へのちょうど半分くらいのところで、お弁当を広げたり、トイレ休憩をするのに都合よい。 この茶屋のとなりにはNHK朝の連続テレビ小説「ほんまもん」のロケ地(平成14年3月放送終了)となった場所がある。熊野古道が世界遺産登録になる前から伏拝には観光客が訪れるようになった。ここには主人公の生家として使われた家、(実際の民家)、茶畑、ドラマの中でなくなった主人公の父と祖母の墓が建てられている。 平成15年、地元有志が呼びかけて主人公の父の七年忌と祖母の13年忌を営んだ。これは熊野を盛り上げた「ほんまもん」を残していこうと企画された。呼びかけたのは伏拝区長の松本保さん、栗栖敬和観光会長、自宅を提供した松本俊二さんの3人。法要には地元住民も約50人が参加し、福寿院市橋宗海住職によって営まれた。 |
伏拝のこれからを考えることは熊野のこれからを考えること。
栗栖敬和さんの話を聞きながら、熊野古道を歩き伏拝茶屋で休憩をとっていたところ、松本俊二さんの奥さんとお話をすることができた。 松本茂子さんは本宮町語り部の会員でもあり、熊野の魅力をたくさんの人々に伝えている内の一人。 和歌山市出身の茂子さんは初めて熊野川を見たとき、とても感動したという。 熊野古道は歴史的・文化的な知識をもって歩くことで、その感動がさらに大きくなるといえるだろう。しかし、ただ熊野の自然に触れるだけでもリフレッシュされる人も多い。 「昔の人だけでなく、毎日の仕事で疲れていても、熊野にいけばまた頑張れる。そう言ってもう20回も来てくれた人もいるんですよ。これが本当の熊野の魅力だと思いますね。」 伏拝は農村環境整備適正技術開発事業のモデル地区にもなっている。ワークショップを開き、 「わがらのいそしいしげづくり」(私達の元気な村つくり)と称して伏拝の発展や残すべき資源などを話合う。茂子さんもその主要メンバーの一人である。(詳しくはわがらのまちづくりをご覧下さい) |
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